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中絶手術を選んだ自分を否定する前に中絶といいうものをまっすぐに受け止める、これこそが一番大切ではないでしょうか・・・。
わが国では、生命尊重の名のもとに、産むことを美徳と考える風潮が根強い。しかし、どんな状況におかれようと、絶対にあって欲しくないのは、望まない出産をすることだ。自分の意志を曲げて、「産めばなんとかなるさ」などという無責任な姿勢で子を産むことだけは避けて欲しい。でも、こうと決めた以上、後悔の日々を送ることがあってはいけない。中絶は確かに望ましいことではないけれど、現時点ではこれが一番いい選択だったと思えるような中絶ができるように、そして、その後再び中絶を繰り返すことがないようにと願っている。
 
 
1951年2月23日生まれ。群馬県出身。自治医科大学医学部卒業。群馬県衛生環境部に在籍のかたわら、群馬大学医学部産科婦人科学教室で臨床を学ぶ。
1988年から社団法人日本家族計画協会・クリニック所長。日本思春期学会理事。
日本母性保護産婦人科医会性教育委員。日本母性衛生学会幹事。主な著書に『十代の後輩におくる僕の性教育』『十代の後輩におくる僕のエイズ教育』(共に日本家族計画協会)、『カラダの本』、『からだにやさしいピルの本』(講談社)など。
今までの性教育といえば、中絶の手術をすると将来赤ちゃんができなくなる、子宮を傷つけたり穴を開けちゃうことがあるなど、手術の危険性をこれみよがしに教え込むことで、「だから中絶するな」「だから妊娠するな」「だからセックスするな」と強調するものが多かった。誰だって、中絶しようと思って妊娠する人はいないし、中絶をするためにセックスするわけではないのだから、このような中絶手術の指導は無意味だと思う。

危険でないとはいわない。手術は、たとえ抜歯や足の疣を取り除くような小さな手術だって、命取りになることはある。だから中絶手術も例外ではない。手術の操作をする場所が子宮の中であるがために、盲目的な手術をせざるを得ないわけで、器械的に子宮の入り口を傷つけたり、子宮の内容物を完全には取り除くことができず感染を引き起こしたり、子宮に穴を開けてしまったりということがまれにある。

中絶すると不妊症になるといわれるのは、そのためだ。中には、局所麻酔をかけた時のショックや、手術後の抗生物質の使用でアレルギー反応を起こしたりという例もあり、軽い気持ちで手術をというわけにはいかないのは事実だ。が、中絶は母体保護法によって認定された指定医でなければ行えず、その医師は高い技術をもっている。指定医であることを確認し、まかせるならば、大船に乗った気持ちで手術を受けなさい。

妊娠する性を持つ女性にとっては、産むための医療も、産まないための医療も、ともに必要だ。そして誰もが必要な時に、必要な医療を安全に受けることができるということは、とても大切なことだ。日本では、現在ほぼ安全な中絶手術が受けられるということを、知っておいていいと思う。
大切なことは、手術そのものよりも、手術後の君自身の生活にかかっている。たとえ医師の説明をよく聞き、納得して手術にのぞみ、手術がうまくいったとしても、その後に不節制な生活をすれば、なんにもならない。だから、日帰りコースの慌ただしい中絶ではなく、せめて一泊二日のゆとりをもって入院する気持ちを忘れずに。手術直後に無理をすると、大量出血なんてことにもなりかねないから、帰宅したその日は、しっかりと安静を保つこと。

親に内緒、学校には知られずにといって中絶したこともあってか、手術をしたなんてなんのその、翌日は体育に、クラブに頑張って体面を保つなんて愚かなことだけはするな。嘘も方便、大人びた行為を体験した女のコなんだから、大人らしくうまく立ち居振る舞おう。帰宅後、数日間は少量の出血があったり、麻酔の影響などもあって頭がボーッとしていたり、子宮を元に戻すための収縮剤を飲むので時々お腹がきゅっと痛くなったりするものだ。でも38度近い熱が続いたり、月経の時にも体験したことがないような大量の出血があったり、耐え難い程の痛みがあったら、予約日なんか気にせずに医者に行くこと。

何にも増して、僕が一番心配するのは、中絶をしようという場合に、君が十分納得の上の合意のもとに中絶ができるかどうかだ。「産みたかったのに産めなかった」では悔やまれて仕方ないだろう。今自分の置かれている環境や立場を考えたら、これがベストの選択といえるような中絶であるように。中絶の選択をした君に対して、彼がよき理解者として君を励まし続けられるパートナーであることを信じたい。

「将来赤ちゃんは産めますか」との不安があるようだけど、心配無用。むしろ、今回の妊娠で、妊娠できるからだだってことがはっきりしたことは大きな収穫だ。自信いっぱいに、近い将来の喜びの妊娠を待ち望んでいたらいい。でも、前に述べたようなことを十分に頭にたたき込んでおいて、再び同じことを繰り返さないようにして欲しい。
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